2. 顧客体験最適化目的でのPIMとDAMの共通点と違い
役割分担を考える上で、まずは顧客体験を二つの領域、ベーシックな体験とエモーショナルな体験に分けます。
ベーシックな顧客体験とは、顧客に対して正確で一貫性のあるデジタル化された製品情報を、最適なチャネルを通じて、顧客が求めるタイミングで提供できているか、になります。これは顧客の提供企業側への基本的な要求であり、この時点で問題のあるブランド製品は顧客体験競争ですぐに脱落してしまいます。
例えば、ECサイトの製品詳細ページで提供する「価格」「サイズ」「仕様」などの情報が挙げられますが、これらの基本的な製品情報については、PIMで管理する情報が中心になるでしょう。正確な情報をタイムリーに提供するための効率的な管理が必要になります。
次に、エモーショナルな情報とはなんでしょうか?それは“個客”の心に訴えかけるコンテンツです。製品の機能や品質がどんぐりの背比べで、コモディティ化する時代には、やはり顧客それぞれの嗜好や価値観、ライフスタイルに合った訴求をして、他社と顧客体験で差別化する必要があるのです。
エモーショナルに直接訴えかけられる製品情報は、やはり、視覚に訴える画像や動画、そして心に響くメッセージです。これら「画像」や「動画」を管理するソリューションはDAMソリューションになるでしょう。
エモーショナルな体験を提供するためには、将来的には嗜好や価値観を表す顧客データと連携し、AIを活用してその顧客の嗜好や価値観、そしてシチュエーションに合うように画像や動画を加工し、リアルタイムに提供することが求められます。非常に難易度の高い施策が求められますが、顧客体験で競合と差別化が求められる時代においては、チャレンジすべき領域と言えます。
PIMとDAMとも最高の顧客体験を提供するために必要であることは間違いありません。PIMとDAMは機能統合されていれば、より顧客への体験提供がスムーズになりますが、MDM(Master Data Management:マスターデータ管理)を活用しシームレスな統合ができていれば、分かれていても問題はありません。大事なのは、最高の顧客体験を提供する上で、どの製品情報をどのタイミングで、どのチャネルで提供するべきか議論して可視化し、マーケティング、IT関係者全員で共有すること。その上で、どのようにシステムやデータを管理すべきなのかを検討することです。
本稿では、PIMとDAMの共通点、役割の違いを、業務効率化、顧客体験最適化、それぞれの視点で解説してきました。PIMとDAMは自社の業務や組織により、導入状況はさまざまかと思います。
大事なのは、製品情報管理ソリューションの導入を、業務効率化視点だけでなく、顧客体験最適化視点でも考えるべきということです。今後はより顧客体験最適化視点での管理の仕方に重点が置かれてくることでしょう。まずはPIM・DAMへの理解やノウハウを持ったベンダーを把握し、相談してみてはいかがでしょうか。